
吉本ばななさんの「アムリタ」を読んでいる。
どこかのココロの記憶の隅に、ずううっとひっかかってた本。
最初の数行を読み始めた時、これはなんだ、と思った。
歳の離れた弟。そして、妹。突然の死。
ある出来事をきっかけにできてしまった、
わたしとわたしの記憶の間にあるもの。
設定は違うけど、主人公のきょうだいの構成や、
シチュエーションが、妙に自分とシンクロする。
ボタンを掛け違えたパジャマを着たまま、夢を見ているようだ。
奇妙な感覚。
胸かどこかがつっかえるような、懐かしさがまだ切ないような、
泣きたいような気持ちになる。
このまま読みすすめたくないような気持ちと、
ずーっと読んでいたい気持ちとが、
相反する。
吉本ばななさんの文章は、やさしくてせつないあたたかさが、
奥底に横たわるかなしみをつつんでいる感じがして、
じわり、じわりと胸にくる。
文中でも、亡くなった妹を思い出させる本を探すシーンがあったように、
主人公と弟のやりとりを読んでいるうちに、
弟が幼かった頃の思い出が浮かんでくる。
小学校3年の頃、弟が親の財布からお金を盗んだ事があったっけ。
確かその時は、祖父の葬式があって、ばたばたしていて、
誰も構ってあげられなかった頃だったな、とか。
ワタシが学生の頃、親の代わりに弟のキャンプについていったよな、とか。
ぽつぽつと、思い出す。
この主人公に、ワタシ自身を重ねている。
こんな風に本を読む感覚は、初めてだ。
多分、少し前に手に取っていたら、苦しくて読めなかったし、
もっと前では、この本のから読みとれるものは少なかったかもしれない。
今だから、読める本。今だから、読み取れるもの
出会うべくして出会うものは、しかるべき時を選んでやってくる。
そんな気がする。