スピリチュアルケアのボランティアとして、
緩和ケア病棟への訪問を続けています。
私がその病院でスピリチュアルケアとして行っている事は、
こちらから何かを働きかける、というのではなく、
患者さんや付き添われているご家族の方の、
今思ってらっしゃることや、考えておられること、
今まで生きてこられた軌跡、
などのお話を聞かせていただき、
お気持ちの整理や、人生の振り返りの時間の
きっかけの場に、一緒に過ごさせていただく、
というものです。
今まで学んできたグリーフケアは、
スピリチュアルケアに含まれます。
「グリーフ」とは「喪失を伴う悲しみ」を指します。
大切な人との死別、だけでなく。
病になった時や、介護や看病をする立場となった時。
引越や卒業、就職や退職、結婚や出産、離婚。
私も含め、どんな人も様々な場面で、
喪失を経験しています。
その喪失により、肉体的・精神的なレベルだけでない、
もっと深い部分ースピリチュアルとも言うべき部分での
痛みが起こりえます。
そしてその喪失感やその痛みは、
その人だけが体験しているものであり、
どんな似た経験をしていたとしても、
まったく同じではありません。
その前提に立った上で、
それでも、お話を聴くという形で、
一緒に時を過ごす、ということ。
話したって何にもならないかもしれない。
実際、なにもできない無力感におそわれることは、
しばしばあります。
相手のことを感じながら、出会うのは
私の方が教えていただいたり、
胸を突かれるような場面ばかりです。
でも、一瞬の出会いの中でも、
誰かがそこにいないと起こらない交流が、
相手と自分との間に生まれるのです。
私が出来るのは、出会った時間と空間を、
大切に、自分の中に積み重ねてゆくこと。
そして相手の力を信じること、だけです。
