生まれたら死ぬ
単純なことながら
(小笠原医師の川柳)
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映画を観ました。
「四万十 いのちの仕舞い」という、
四万十市で医師をされている、
小笠原望さんの姿を描いたドキュメンタリーです。
診療所だけでなく往診もされている小笠原医師の、
患者さんとそのご家族の方の傍らに常にいて、
いのちに寄り添う姿が描かれています。
いつでも、どんな患者さんに対しても、
やさしく、「いかがですか」と話しかけ、
患者さんのありのままを受け止める様子。
四季折々の四万十川の景色が、その日々と共にあります。
ひとのいのちもまた自然のなかにあり、
そのなかに穏やかに、溶け込んでいく。
そのように綴られている映画でした。
映画の後、溝渕雅幸監督と、
淀川キリスト病院理事長の柏木哲夫さんとの、
トークショーもありました。
グリーフケアの講座で受講した内容や、
緩和ケア病棟で患者さんに接している時のことを、
思い出したりしながら聴いていました。
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映画とトークショーを通じて、
印象に残った話、感じたこと等、徒然。
生きることは、それ自体が旅のようなもの。
その旅の終わりをどう迎えるか。
家族のこと、そして自分自身のこと。
やさしさと温かさが失われている現在の医療、
病院から在宅へと看取りの場を押し戻そうとしている行政と、
自宅で最期を迎える事は、様々な条件が揃わないと難しい現状。
緩和ケアでの患者さんの思いは、
痛みや苦しみを取り除いて欲しい事。
陰性感情(どうしようもない辛さや不安)
をわかってもらいたい事。
経験していないその思いをわかることは決してできないけれど、
そこにいかに寄り添おうとするのか。
病ではなく、患者自身を看ること、受け止める事の大切さ。
患者との関わり方の深さは、こちら側の人間力が問われる。
医療現場で、患者や家族の為をと思っていても、
それでも立ち会う、辛く悲しい場面。
でも、その経験こそが人間力を育ててくれるのではないか。
看取りとは、最期の瞬間だけではなく
そこに至る迄のストロークも含まれる。
人はいのちの最期を目の前にして、
それまで隠されていた魂がむきだしになる。
その魂は、名も知らない小さな花にも、
美しさを見いだし、ふるえる。
その感性を養っておきたいと思う。
誰かがそのささやかさに、
美しさを見た時に、
その魂に寄り添えるように。