2012年、9月の新月の日に。
弟は逝ってしまった。
月が、弟と一緒に隠れてしまった。
かくれんぼなら、出ておいで。
月は再び出てくるというのに、弟は戻ってこない。
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一年前に、書いた備忘録に、書いていた文章。
弟は、27歳で亡くなった。
若いとはいえ、社会人4年目の立派な成人となっていたのだが、
私の記憶の中に存在する弟は、小学校低学年の頃の姿が多い。
歳が14も離れている上、彼が中学生の時に、
私は結婚して実家を離れてしまったものだから、
それ以降の彼の印象が、非常に薄いせいもある。
大人になって、図体が私よりはるかにでかく、
思っている以上に頼りがいがあったというのに。
幼さを残したその顔が、笑顔になると、
本当に、小さい頃と変わらなくて。
だから、私の中では、小さい弟のままなのだ。
「おっきいねえちゃん」と人懐こい笑顔でなついてくる、あの姿が。
不意に、あの頃繋いだ、小さな小さな手の感触を思い出すと、
どうしようもなく泣きたくなる。