弟が、急に倒れた、という電話があったのは、
2012年9月16日に日付が変わって間もない頃だったと思う。
その日は早朝から、大山へ行くことになっていて、
前日から山登りの準備などやっとし終えて、早めに寝なくちゃ、
と思ってたか、もう眠りについていたときだったか…
携帯電話が鳴った。
電話を取った瞬間、なんだか悪い予感がした。
妹からだった。
最初に妹がなんて言ったかは、覚えていない。
ただ、「まーくん(弟)が倒れた」と伝える時に声が震え絶句した後は、
つとめて冷静に状況を説明してくれたように思う。
広島県福山市で働いている弟が、
同僚と飲んでいる時に、急に倒れて意識不明になった、
という電話が入ったこと、
今しがた両親が車を飛ばして宝塚の実家を出たこと等を話してくれた。
とりあえず、両親からの連絡を待つこと、
朝一番に電車で向かおうという事で、電話を切った。
ただ、ひたすら呆然としていた。
ショックが大きすぎる、というか、あり得なさすぎることで、
まだどこか現実ではないような。
弟が意識不明ということも、広島まで両親が車を飛ばしているという事実も、
一枚のベールを通して伝わってきているような感覚。
だから、次に来る電話が、「いや~、勘違いやったわ」とか
「病院ついたら目覚ましてたわ~」とかでありますように、という
うっすらとした希望とか、祈りを抱いてるんだけど、
そう思ってる自分の状態自体も、なんだか芝居じみていて信じられない。
そうしている一方で、
「真夜中の電話、というのは、大抵悪い知らせっていうのは本当だな」
とか、
「状況を考えると心筋梗塞の可能性が高くて、心肺停止状態から5分以上経ってたらまずいんだよな」
とか、
「朝になったら、山に行けなくなった事はダンナに伝えてもらわなくちゃ」
とか、
妙に冷静にとらえている自分もいた。
ソファでうつらうつらとしながら、
祈る感情と冷静な理性との間で揺れている夜明け前、
再び電話が鳴った。
今度は母から直接だった。
「…まーくんが…まーくんが、死んじゃったよぉぉ…」
と電話の向こうで、母は泣き崩れた。